近年、保健所や地方衛生研究所(以下、地衛研と略する)により地域保健情報システムが構築されつつある。しかし、その目標達成状況は評価されたことがない。本研究では、老人保健福祉計画で用いられる健康指標の活用に焦点を絞って、市町村、保健所、地衛研の間で指標の提供や分析に関する支援関係は確立されているのか、ということを調べた。
東京都と石川県の地衛研を対象として、文献とヒアリングにより保健情報システムの構築について事例調査を行った。また、東京都と神奈川 県の90区市町村の老人保健福祉計画担当者、および73保健所の保健情報担当者を対象 としてアンケート調査を行った。区市町村には、計画作成過程での健康指標の使用状況、今後の意向、保健所からの支援などを聞いた。保健所には、主要な死亡指標の算出、高齢者に関する調査、市町村支援などを聞いた。さらに、両都県における人口動 態統計死亡データの還元方法を調べた。
2つの地衛研とも、総合的な保健情報シス テムの構想を作成し、その一環として死亡統計のデータベースを構築していた。対象とする単位地域には差があり、都は47都道府県と都内13二次医療圏、石川県は県内41 市町村であった。毎年、都県や政令市は、厚生労働省より区市町村の性・年齢階級・死因別死亡数を得ることができる。しかし、それを得ていない自治体もあり、その蓄積体制もなかった。
アンケートの回収率は区市町61.1%、保健所67.1%であった。 様々な健康指標を区市町が使用した割合は、分野別にみると、介護福祉関係(50%以 上)、老人保健関係(25%〜50%)、医療施設や死亡統計(〜25%)であった。保健 所が扱う死亡統計などの使用割合は低かった。県型保健所の支援を受けた例は1件であったが、60.4%は今後の支援を希望し、使用する指標を拡充する必要があると80.0 %が回答した。保健所が行った健康指標の分析は、老人保健事業の関係が最も多く(58.3%)、管内の年齢調整死亡率などの算出は半数以下(43.8%)であった。これらの実施は、管内自治体からの問合せの有無と関連していた。地衛研と協力して実施した例は無かった。
市町村は、老人保健福祉計画で種々の健康指標を活用することに積極的で、過半数が保健所の支援を望んでいた。確立途上にある市町村、保健所、地衛研の健康指標をめぐる支援関係を深める上で、市町村の死亡データを経年的・電子的に管理し活用することが重要と考えられた。それには、活用事例の蓄積や、地衛 研での経験の集約が必要である。