本研究は、精神症状が固定化し、長期入院を余儀なくされている慢性期統合失調症の長期在院患者においても、なお人間的成長が可能であることを、現象学的心理学の立場から明らかにしようとしたものである。第1部(理論編)では、統合失調症及び現象学的方法に関する従来の理論を詳説・整理するとともに、本研究での現象学的方法の定義・解説を行った。第2部(事例篇)では、筆者自身が看護師として関わりをもった慢性期統合失調症患者の5事例を詳細に紹介し、事例研究を行った。最後に第3部(統合考察篇)において、5事例の状態像を比較しつつ総合的考察を行い、周囲からの関わり方が変わるならば、慢性期長期入院患者においても自己形成への胎動が認められ、看護師による生涯発達への働きかけが可能であること(それは医学的課題であると共に教育学的課題であること)を主張した。